建設業と社会保険料

野末和彦

2012年11月14日 13:08

独立開業される方で加入を非常に悩まれるのが社会保険です。

私も相談をよく受けます。

現行では法人では強制加入、個人事業主では労働者が5人以上の場合に加入(業種により異なる)が義務付けられています。将来の年金不安や保険料負担などの問題により社会保険に未加入の事業者が多い中、日本経済を支えている建設業ではとくに昔から社会保険未加入という問題が根深いものとなっています。

そうした状況を受け国では、今年に入って建設業の社会保険未加入業者に対して具体的な対策を実施し始めました。

①経営事項審査における保険未加入企業への減点措置が厳格化(平成24年7月1日施行)

公共工事の入札に参加するためには建設業者の企業規模・経営状況などの客観事項を数値化した「経営事項審査」を受ける必要があります。この審査において、社会性等(労働福祉の状況)に係る評価の項目及び基準が見直されました。

評価項目中「健康保険及び厚生年金保険」を、「健康保険」と「厚生年金保険」に区分し、各項目ごとに審査し「雇用保険」、「健康保険」及び「厚生年金保険」の各項目について、未加入の場合それぞれ40点の減点(3保険に未加入の場合120点の減点).

→最高120点も減点されることになりましたから、とくに公共工事を受注している未加入事業者の場合、入札を受ける際に非常に大きなデメリットとなります。


②建設業の許可申請書の添付書類に保険加入状況が追加されます(平成24年11月1日施行)

許可行政庁が、建設業法に基づく許可(許可の更新を含む。)の申請時に、保険加入状況の確認、指導等を行うため、申請書の添付書類として、健康保険等の加入状況を記載した書面の提出を求めることとし当該書面の様式が整備されます。 健康保険等の加入状況とは、健康保険法、厚生年金保険法、雇用保険法による被保険者となったことの届出の状況のことです。

→未加入の場合は加入指導が行われるようです。場合によっては許可が下りないとか更新できないことがあるかもしれません。


③ 施工体制台帳等の記載事項に保険加入状況が追加されます(平成24年11月1日施行)

特定建設業者及び下請負人が、その請け負う工事における下請負人等の保険加入状況を把握することを通じて、適正な施工体制の確保に資するよう、特定建設業者が作成する施工体制台帳の記載事項、下請負人が特定建設業者に通知すべき事項に、健康保険等の加入状況を追加することになりました。

→未加入の場合は加入指導が行われるようです。


以上のような具体策が実施され、さらに国では具体的に将来次のような方向性を考えているようです。
建設業における社会保険未加入問題への対策については、行政、元請企業、下請企業など関係者が一体となって、総合的対策を実施し、実施後5年を目途に、企業単位では許可業者の加入率100%、労働者単位では製造業相当の加入状況を目指す。


建設業従事者にとってはまさに死活問題と言えるでしょう。
消費税増税、社会保険料負担など今後ますます費用負担が増加し、生き残るべく売上単価設定や原価管理さらには無駄な経費の削減など今まで以上に企業努力が必要となってくるでしょう。

また、これは建設業だけに関わらず将来的には全業種ということにも当然成り得ることだと思います。そのようなときのために起業時から会社に体力を残すような財務体質を築いていかなければならないと思います。

                                 

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